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今乗りに行くべき!福井が誇る秘境のローカル線「JR越美北線」乗車記【福井→九頭竜湖/2022年9月】

 

今回は、福井県を走る秘境ローカル線「JR越美北線」に乗りに行ってきたときの様子をご紹介したい。全国でも指折りの"廃線危惧路線"と噂される同線だが、実際に乗ってみると、もはや「逆によく今までこの路線存続してたな…」と思えてくるほど"ローカル線していた"。

 

【もくじ】

 

 

福井平野を駆け抜ける、1両のディーゼルカー

特急サンダーバード34号を福井で降り、越美北線が発着する2番線へとやってきた。止まっていたのは、昔ながらの朱色(いわゆる「首都圏色」)に身を包んだ、1両のキハ120。JR西日本のローカル線ではおなじみのやつだ。

 

福井駅越美北線の時刻表。列車自体も1日8本しかないが、終点・九頭竜湖まで足を延ばす列車はさらにその半分しかない

さて、この越美北線だが、ローカル線らしく本数が非常に少ない。終点の九頭竜湖まで足を延ばす列車に関しては、なんと1日にわずか4本しかないのだ。そして今回乗ってきたサンダーバードは、その1日4本のうちの1本に対して「乗り換え時間わずか7分」という奇跡の接続を誇っている。だが、そんなにギリギリで乗り込んでも席なんか空いているはずがなく、めぼしい座席はすべて旅行客や鉄道マニア、そしてローカル線の大口顧客である地元の中高生で埋まっていた。仕方がないので車両後方に立ち、ちょっと空いてきたら後面展望でも楽しむことにする。

列車(列を成しているとは言っていない)は、16:50、定刻で福井駅を発車した。

 

越前花堂駅。奥に見えるのが北陸線ホーム

福井を発車した越美北線の列車は、次の越前花堂までは北陸本線の線路を走る。とはいえ越前花堂駅のホームは、このように北陸本線越美北線でしっかりと分かれており、それゆえ越前花堂に着く直前で線路はすでに二手に分かれているのだ。

北陸本線は、2024年3月の北陸新幹線延伸開業を機に、JRから経営が切り離されることが予定されている。そうなれば青春18きっぷは原則使えなくなるわけだが、越美北線の列車で福井→越前花堂を移動するときは使えるようにしてくれるのか、それともそうした特例は設けないのか、個人的にはちょっと気になるなと思った。とはいえ正直、2024年3月まで越美北線は存続してくれるのだろうか……という心配も、それはそれでまたある。

 

越前花堂で数名の乗車があって以来車内には動きがなかったが、そこから3駅目の越前東郷で、地元の利用者の方が数名下車していった。中には買い物袋を提げ、手にきっぷを握りしめた男の子などもおり、電車に乗って街までおつかい……なんていう情景が想像されて和んだ。

列車は、田園の広がる平地の中をひたすら進んでいく。速度は70km/h前後出ており、意外と速い!というのが正直な感想だった。まあ、この先もっと速度が遅くなるところなんていくらでもあるのだが、ともかく平地では意外にスピードを出すんだ、ということに少し驚いたのだった。

 

次の一乗谷駅に着く直前には、何やら真新しく立派な建物が見えた。よく見ると「新博物館10月1日開館」と書いてあり、これはまだオープンしていない施設であることがわかる。

これは「福井県一乗谷朝倉氏遺跡博物館」としてオープンする予定の建物。実際の遺構や朝倉家当主・義景の居館を再現した模型など、朝倉氏に関するさまざまな展示物が用意されるようだ。一乗谷の駅からも近そうだったので、もしかしたらここへのアクセスで越美北線を利用する人も出てくるのかもしれない。

福井平野の終わり

さて、この一乗谷のあたりで、ここまで続いてきた福井平野は終わりを告げる。そしてここからの車窓は一気に山深くなり、ローカル線の色もどんどん強くなっていくことになる。

 

うねる線路と足羽川、そして天下の必殺徐行

第1足羽鉄橋を通過中

一乗谷を出ると、列車はほどなくして足羽川という川を渡る。ずいぶん立派な鉄橋だが……このすぐ先で、列車は急に、時速25km/hにまで減速を迫られることになる。

なぜそんなことになっているのかというと、これはJR西日本お家芸「必殺徐行」というのを行っているからだ。これは「列車の速度を落とすことで線路へのダメージを減らし、線路の保守にかかるコストを削減する」という、JR西日本が限界赤字ローカル線で繰り出す最後の切り札となっている。逆に言えば、これが登場するということは、この路線の経営状況は……まあ、お察しだということだ。

 

越美北線の2019年度の営業係数は「1,366」。この数字が意味するところは、つまり「100円稼ぐために1,366円の経費がかかる」ということだ。これはJR西日本全体で見ても9番目に悪い成績となっており、越美北線の経営の厳しさがよく表れた数字だと言えるだろう。

実際、昨年(2021年)には、越美北線の列車が8割減便されるかもしれないという報道すらなされたくらいだ。8割に減便、ではなく「8割を減便」である。結局この壊滅的な減便は免れたものの、依然として大幅減便、あるいは廃線の可能性すら常にぬぐい切れないというのが現状だ。だからこそ、越美北線は「今乗りに行くべき」路線なのだ。

 

さて、列車は次の越前高田駅に向けて歩みを進めているわけだが、なんとこの間に足羽川を3回も渡っている。線路もうねうねと蛇行しているが、足羽川はそれ以上に複雑に蛇行して流れているからだ。どうしても急カーブを描けない鉄道は、自由に急カーブを描く川を何度か渡りながら、なんとか川に寄り添って進んでいるというわけだ。

 

次の小和清水では、学生さんが1人乗り込んできた。ここまで車内のお客さんは降りる一方だったので、久々の乗客だ。ただ、この時点ではまだ降りた人は数名で、車内は依然として込み合っている。

 

大野の市街地に向けて

越美北線の列車は、このあたりではいよいよとんでもないところを走り始める。急峻な山にかかる霧と雲、崖ギリギリに敷かれた線路にはスノーシェッド。必殺徐行も何度も繰り返しており、どんどん人里離れた車窓になっていく。

そんな中に現れた美山駅は、この区間においてはずいぶん活気のある駅。ホームは2面あるし、ちゃんとした駅舎と構内踏切がある。さらに、対向列車がここでやって来て、実際に行き違いを行ってもいる。下車も何名かあり、ちゃんと「駅としての活気」を有している駅だなと感じられた。駅の近くには学校などもあり、なるほど、ちゃんと人の息吹が感じられる地であることがわかる。

 

越前大宮の駅は、なんだか三江線なんかで見たことがあるような構造をしている。これ以降にもこういう構造の駅は何個かあるのだが、要はこれが当時のローカル駅のスタンダードだったということなのだろう。

計石の駅は、目の前にレトロなタバコ屋さんが構えていた。現在も営業しているのかはわからないが、自販機が営業していたこと、そして建物に人がいたことを鑑みるに、少なくとも建物としてはまだ現役なのだろう。ローカル線の駅前にある昔ながらのタバコ屋さん、なんともノスタルジックな光景が今なお残っているようだ。

 

このあたりの区間で見られる、水墨画のような景色

さて、列車は相変わらず、とんでもなく山深いところを走っている。豊かな青緑で統一された山々、そこにかかる白くて厚い雲。まるで水墨画の中を走っているような気になってくる。秘境、という言葉がこれほど似合う情景もそうはないだろう。

ただ、驚くべきことに、福井から乗っている下校中の学生さんたちはまだほとんど車内に残っている。すでに福井を発ってから50分近く経過しているのだが、彼らは毎日この距離を、この道のりで登下校しているのだろうか。完全に部外者の自分がこれを言うことが適切かどうかはわからないが、本当に頭の下がることだなと心の底から思う。

 

次の牛ケ原でようやく周囲が開け、車窓には水田が見られるようになった。列車が山を抜けて、大野盆地へと入ったのだ。そして、続く北大野ではついに駅前に駐車場が現れ…

しばらくぶりの市街地を通り抜けて、ついに……

越前大野駅、到達!!!!!!

 

ここ越前大野越美北線の運行上の拠点となっており、ここに置かれている車両基地の「越前大野地域鉄道部」には越美北線ディーゼルカーが所属している。また、越美北線の沿線で最大の都市であり、3万以上の人口を擁する大野市の主要駅でもあるため、越美北線の中間駅としては断トツで乗降客数が多い。福井からずっと乗っていた学生さんをはじめ、地元の人たちもほとんどがここで降りて行ってしまった。

 

ついに"真の奥地"へ

越前大野駅を離れる列車

というわけで、ここで初めて目に見えて乗車率が下がり、残っている人もほぼ鉄道マニアしかいないという状況になった。ここから先は、いよいよ「越美北線の"真の奥地"」へと足を踏み入れていくことになる。

正直なことを言えば、ここまでの区間ですら「よくこんなとこの路線が今まで維持できてたなあ」という感想だった。とはいえ上述のとおり、ここまではまだ通学の需要があった。ここから先の区間では、それすらもほとんどなくなってしまうのだ。

 

列車は越前大野を発車したあとも、しばらくは大野盆地の平坦なところを走る。しかし、3駅先の下唯野が見えてくるあたりから、また少しずつ山間へと首を突っ込んでいく。少しずつ急になっていく上り坂を、エンジンをうならせて力強く進んでいくキハ120の姿はなんとも頼もしい。

そして、高台から集落を見下ろせるような立地になっている柿ヶ島駅を経て、

とんでもない高さから九頭竜川を見下ろす谷を越えて、列車は終点の2駅手前、勝原駅に到着。ここから先は国鉄ではなく、鉄道公団と呼ばれる機関が建設した区間となっている。

 

公団の影がちらつく?末端区間

鉄道公団は、かつて鉄道路線の建設を担っていた公的機関で、国鉄とは独立した機関となっていた。需要の全くない赤字ローカル線でもどんどん建設し、それを国鉄に貸し付けていたため、国鉄にとりついたキングボンビーと揶揄されている。

 

公団が建設した路線の特徴として、ローカル線にもかかわらず長大トンネルや高架を多用しているというのがある。公団は路線を運営するわけではないので、いくら建設コストがかかっても、いくらその元が取れなくても一切問題ないからだ。この越美北線の勝原~九頭竜湖間も例外ではなく、この区間だけは険しい山をひたすら長大トンネルで貫いており、列車は猛スピードでそこを通過していく。たっぷりとコストのかかった、列車にとっては走りやすい線路だというわけだ。

(あまりにも映り込みが激しいため、トリミングしています)

こちらは終点の1つ手前、越前下山駅の様子だが、もはやガラスが曇りすぎて何が何だかよくわからない。要は、それだけ長いトンネルを抜けてきたということだ。

そして列車は再び長大なトンネルへと入り、それを抜けると……

 

福井から約1時間40分、ついに終点・九頭竜湖に到着……!!!

 

九頭竜湖は1面1線の駅となっており、ここまで乗ってきた列車は、このまま折り返して福井へと戻っていくことになる。この駅で列車の行き違いなどはできないが、まあ本数が本数なのでそんな必要はないということだ。なにせ、この駅にやってくる列車は、1日わずか4本しかないのだから。

 

終点ということで、駅の端には車止めが設置されている。しかしその線路を見ると、何やら名残惜しそうに、その向こうにある山に向かって伸びたがっているようにも見える。

 

引用元: https://news.mynavi.jp/article/trivia-279/

実はこの越美北線、本当は九頭竜湖止まりの盲腸線で終わるはずではなかったのだ。本当はここからさらに山を越えて岐阜県へと入り、岐阜を南北に貫く越美南線(現在の長良川鉄道越美南線)とつながって、日本海側と太平洋側を結ぶ一大路線になるつもりだったのだ。しかし結果的にそうはならなかった。完成させたところで採算などとれるはずがなく、工事は打ち切りになってしまったからだ。

 

九頭竜湖駅でもらえる到着証明書

そんなわけで「しぶしぶ終点をやっている」ような状態の九頭竜湖駅だが、盲腸線を2時間近くかけて抜けた先の終着駅、そして福井県最東端の駅ということで、旅人やマニアを引き付けてやまない存在にもなっている。駅に隣接している「道の駅 九頭竜」のスタッフの方が窓口業務をしており、到着証明書なるものをくれたりもするのだ。

 

駅舎はこんな感じ。上述のとおり道の駅が隣接しており、そこにファミリーマートが入居しているため、ひなびた終着駅のわりに食料の調達には困らない。

 

まとめ:乗れるうちに乗ろう

というわけで、福井県を走る長大ローカル線「越美北線」を全線乗り通した様子をお伝えしてきた。正直これから減便は起きるだろうし、特に末端の区間は、予期せぬ災害で突然廃止になってしまう可能性も普通にあると思う。なかなか行きにくい立地ではあるが、ぜひ乗れるうちに乗っておくことをおすすめしたい。

 

(※この記事の情報は、すべて2022年9月3日現在のものです。実際に訪問される際は、最新の運行状況など、各社Webサイト等で必ず確認をお願いします。)

 

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